大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(け)12号 決定

被告人 伊藤博明

〔抄 録〕

ところで、控訴趣意書差出期間の最終日の延期については、刑事訴訟法にも同規則にも明文はないが、同規則二三八条には、「控訴裁判所は、控訴趣意書を差し出すべき期間経過後に控訴趣意書を受け取った場合においても、その遅延がやむをえない事情に基づくものと認めるときは、これを期間内に差し出されたものとして審判することができる。」旨定められているところ、右最終日延期の措置は、控訴裁判所が、主として当事者の申出により、遅延がやむを得ない事情に基くものと予め判断し、本来の差出期間経過後であっても、ある特定の日までに差し出されたものは同条に基いてこれを受理し、審判することを内諾する旨を告知することによって、訴訟関係人に安んじて控訴趣意書の作成に専念せしめることとしたものであって、いわば同条に基づく救済措置の予告として実務上行なわれているものであると解せられる。してみれば、裁判所が、遅れて差し出された控訴趣意書を、遅延がやむを得ない事由に基づくものと判断して、これを期間内に差し出されたものとして審判したときに、始めて裁判所が一定の意思を表示することになるのであって、最終日延期の措置は、右意思表示の予告に過ぎないものである。従って、かかる予告は、もとより訴訟関係人に了知されなければならないことはいうまでもないが、関係人に了知せしめる手段方法は、決定あるいは命令の場合のように必らずしも書類の送達等の方法によらなければならないものではなく、どのようなものでも足りるものと解せられる。

そして本件においては、前記のとおり、昭和五一年五月一二日の右第八刑事部書記官による電話による弁護人に対する説明、ならびに同月一四日ころ同書記官による同弁護士事務所員に対する電話による説明により、控訴趣意書差出期間の最終日が同年六月一〇日に延期される旨、正確に告知され、そのころ同弁護人はこれを了知したものと認められるのであるから、控訴裁判所のとった措置になんら違法の点は存しないものと言わなければならない。

してみれば、右のとおり延期された同年六月一〇日の最終日以前はもとより、それより一九日を経た同月二九日に至っても、なお控訴趣意書の差出がなかった本件において、原裁判所が、刑事訴訟法三七六条一項、同規則二三六条一項所定の期間内に控訴趣意書の差出がなかったものとして、刑事訴訟法三八六条一項一号により本件控訴を棄却した原決定にはなんら違法の点は存しない。

(綿引 石橋 藤野)

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